*flower boy,shining boy* ホームセンターに来ていたは、既に目的の物で一杯のカゴへ商品を放っていく。
花の種の袋だった。
レジで会計を済ませ、外へ出る。店外には、みたらし団子や五平餅、たこ焼きなどが売られている売店があった。昼食代わりにと幾つか買い込む。
両手一杯の荷物に辟易しながら、は歩き始めた。
木の葉の里は、ペインの敵襲により、壊滅的なダメージを受けていた。復旧は進みつつあるが、元の姿に戻るのにはまだまだ時間がかかる。
変わり果てた街並みを見て、溜め息。
苦労して家まで辿り着く。買い物の時に使う自転車が壊れているせいだ。
壊れたのは、自転車だけではない。
ナルトと一緒に住む家の一部も、倒壊していた。お隣の家は半壊しているため、木の葉の里の親族を頼って他に移っていった。近隣の人々も同様で、頼る親族が居ない者たちは、避難所生活を強いられている。
木遁を使えるヤマトは今頃、必死で働いて仮設住宅を造っているのだろう。
ナルトは—…。またきっと、すぐに旅立ってゆくはず。
サスケのために。
荷物を置いたら、カカシから聞いた、ナルトが眠っているところへ行ってみようか。昨日も行ったが、ナルトはまだ眠っていた。
全力でペインと闘ったのだ。疲労は度を超えていただろう。
彼は、この里を護った。
彼の忍道を賭けて。
本当は、美味しいものを食べさせて、ゆっくり休養を取って欲しいのだけれど、あのやんちゃで落ち着きない子には無理な話と、諦めの笑みを浮かべた。
「ねーちゃああああんっ!」
ナルトの声だ。
「ナルト? どこ?」
「ここだってばよー!」
ナルトは、半壊した隣の屋根から飛び降りてきた。
「ウチも壊れたっつーから、ねーちゃんが心配で見に来たんだってばよ」
笑顔で言う可愛い弟分は、随分と酷い顔つきだった。見ていて、痛々しいほどに。
「…ナルトぉ…!」
荷物を置いて、はナルトに飛びついた。
「おかえりー!」
「へへへっ、ただいま!」
しかし、声は元気そのもので、少し安心した。
「ナルトったら、また随分男前になったわねえ。サクラちゃんに治して貰ったら?」
青あざにたんごぶなど、傷盛り沢山の顔を怖々と撫でた。
「え? ああ、コレね。うん、後で治して貰うよ」
そう言ったナルトの様子が少しおかしかったので、は本当に、と尋ねた。ナルトはぎこちなく肯定した。
怪しい。
「ペインって人と、殴り合いになったの?」
「んーっと、そんな感じ」
苦笑いしたナルトに、
は疑惑の眼差しを向ける。そんなはずはない。
「そんなことよりさ、中、入ろーぜ」
久々の我が家に、ナルトは意気揚々と凱旋した。
ペインたちの襲撃のせいで、この辺り一帯で地震が起こっている。多少建て付けの具合が悪くなった戸を開き、二人は一緒に「ただいまー!」と叫んで入った。
「ねーちゃん、オレ、ねーちゃんの味噌汁食いたい!」
「ええ、いいわよ。でも、ご飯はないの。レンジで温めるのも切らしていて…。たこ焼きやみたらしがあるから、それ食べてくれる?」
「うん」
「じゃあ、その間に作っちゃうわね」
「ううん、待ってる。一緒に食べたいからさ」
「ふふ。じゃあ、この荷物、出して片付けてくれる?」
は買ってきたばかりの商品を手渡す。中には、日用品や、家の修理グッズが入っていた。ナルトは早速、言われた通りに片付けていく。
冷蔵庫を開いたは、豆腐や味噌を出して料理の準備に取りかかった。
「ああーーッ!!」
ナルトの大声を聞き、は慌てて振り向く。
「あれっ、あれぇー!」
ナルトは泣きそうな声で、家の外を指差している。
「ああ、それね。残念だけれど、見ての通り。壊れちゃって…。お花もね、半分以上潰れてしまったの」
は調理を止めてナルトへ駆け寄った。
窓の近くにあったプランター植えの花は元より、家の外に作ってあった花壇なども、隣の家の屋根や二階へ続く外階段が落ちてきた所為で、酷い有様だった。
窓や壁の一部は、ヤマトが忙しい合間に来て、直してくれた。
しかし、花の命は、戻らない。
ナルトが大切に大切に育てていた花たちが台無しになり、も心を痛めていた。
ナルト自身が戻ってくれたので、それでよしとしなければ、とも思ったが、ナルトの悲しむ顔は見たくなかった。
「それで、買い物袋に花の種があったんだな…」
花の種の袋と、真新しいプランターを窓の近くに置き、ナルトは言った。
「花は散っても種が残るけど、あれじゃもう無理か」
家の外はまだ手が回らず、花壇は瓦礫に埋もれたままだった。かろうじで生き残っていた花たちには、が水をやっている。
「ナルト、時間はかかるけれど、またお花で一杯にしましょうね」
ナルトの肩を抱き、は優しい声で言った。
「うん!」
にこっと笑うナルトに、は思わず涙腺が緩んだ。
「ナルトが自分やサスケ君のために頑張って、お家に帰ってきてくれた時、お花が綺麗に咲いていて欲しいの。だから、お家のことは私に任せてね」
「うん、オレ、ねーちゃんのこと頼りにしてるってばよ!」
短く微笑みあって、は台所へ戻った。
ナルトは、プランターに土を詰めたくて外に出る。家に戻って、どの花の種を植えようか、種の袋を並べて迷ってしまう。六つの中から何とか選び、開封。
早速水もやり、水が土に吸い込まれていく様を見て、ニッと笑ってしまった。
ああ、嬉しい。
また、いのちと出会えることが。
この花が咲く頃には、家に帰っていたい。
サスケやサクラちゃんにも、見せてあげたい。
サイも誘おうか。
カカシ先生やヤマト隊長も呼んで。
イルカ先生にも声を掛けよう。
このサルビアが咲いたところを、一緒に見たい。
エロ仙人も居たらな…。
会ったばっかりの父ちゃんにも、会ったことのない、母ちゃんとも。
種の袋の裏には、花言葉が書かれていた。
サルビアは、家族愛。
他にも、が選んだものには、友への思い、という意味を持つヒャクニチソウなどがあった。プランターでも育つが、サルビアの残りと一緒に、花壇で育てようと思う。食事をしたら、花壇を片付けようと決めた。
まだ、サスケまで辿り着くのは時間が要るだろう。
それでも、誓いのように、想う。
必ず、みんな揃って、木の葉の里に帰ってくる。
の手作り料理をたらふく食べて、笑って、ずっと一緒に居たい。
だから、この家から、また暫く出て行かなければならない。
「ナルト、出来たわよ」
「おう!」
ささやかな昼食の後、ナルトはに甘えながら言う。
「この後は、一緒に花壇作ろ?」
「ええ、いいわよ」
「オレ、夕方には、また出て行く。サスケが抜け忍として根の奴らに狙われてる。雷影のとこの忍たちも、サスケを探してる。だから、暫く戻れない」
ナルトはトーンを落とした声で語った。
「ねーちゃんには悪いけど、どれだけかかるか判らない。長くなるようなら、もちろん連絡はする」
「そうね、連絡は、欲しいわ」
「花壇が花で一杯になる頃には戻りたいけど、無理かもしんねえ」
「焦っては駄目よ」
「うん」
真剣な眼差しのナルトを見て、は少し軽い口調で言った。
「ナルトがね」
調子の変わったを不思議に思い、ナルトはを見つめる。
「ナルトが夢を叶えるためなら、私、幾らでも待つわよ。時には一緒に闘いたいけれど。今の私の夢はね、ナルトが火影になる姿を見ること。そのお手伝いをすること。でも、一番近い目標、夢は、このお家をまたナルトの好きなお家に戻すことよ。さっきも言ったけれど、お家のことは任せて。お花の手入れも、ちゃんとするから」
ナルトは、から発せられる慈愛の気配にくすぐったさを覚える。彼女の瞳を見ていると、安心出来る。包み込むような優しい声で、癒された。
「ねーちゃん、オレと一緒に、夢に向かって頑張るってばよ!」
いつものように、ナルトにしかできない目一杯の太陽の笑顔で彼は笑った。
この笑顔を護りたい。可愛いナルトが、いつでも笑顔でいられるように。
「ねえ、その傷、私が治してみてもいい?」
「へ?」
「ナルトがサスケ君探しに行ったり、仙人の修行している間に、私も医療忍術を習っていたの」
「マジで?」
「そう。まだまだ見習いだけれど、少しは治せるわ」
「ホント!? じゃ、オレ、ねーちゃんに治して貰お! あ、そーだ。久々に膝枕してよ!」
「…それは必要ないな」
「えーー!」
と居ると、ナルトは甘えたくて仕方なくなる。結局は、はナルトを甘やかす。いや、甘やかしたい。
水のやり過ぎには気を付けないと、と思うが、どうしても、ナルトを見ていると抱き締めたくなる。
ナルトという一人の少年は、これからもっともっと素敵な花を咲かせるだろう。
それを側で見ていたいは、自分の膝に収まったナルトの頭を撫でた。まずは顔の傷に手をやる。服の間から包帯が見えていたので、眉をひそめた。
ナルトは九尾のおかげで傷の治りが早い。本来なら、顔の傷も二、三日で消えるだろう。
それでも、は全力で治療に当たる。
「ナルト、ちゃんと戻ってきて、ただいまを言ってね。おかえり、って言いたいの。そして、色んなお話、聞かせてちょうだい」
「うん、言う言う! オレの家、ここだけだから。ねーちゃんが居るところだけだから」
は嬉しくなり、チャクラの放出力が強まった。我ながら単純だ、と思う。
精緻なコントロールが必要な行為であるため、はすぐチャクラを調整した。
ああ、どうか。
このナルトに、暖かな陽が当たり続けますように。
彼が笑っていられる世界でありますように。
例え嵐が来ても、私が護れますように。
一緒に、乗り切れますように…。
**超・蝶・超! 久々のナルト夢です。
私の頭の中では、ナルトは毎日居ますけど。
ついでに、休載の淋しさに耐えきれず、ゴンとキルアもかなり前から一緒です。
三人に喋らせると楽しいです。思い込んだら一直線ゴンと、とにかく忙しなくて言うこと聞かない問題児ナルトに振り回されるキルアに、S.D.KYOのアキラを加えて怒らせたいです。
キルとアキラも反りが合わないくせに、ゴン&ナルトコンビには一緒に手を焼いちゃうので微妙に困らせられる側の仲間意識みたいなのがあります。でもなかったことにしているんです。癪だから。
それを、一、二メートルくらい離れたところで、ほたるがじっと見てます。時には、付き合いきれなくて一人でさっさと先へ進みます。ここに、ポケモンのルカリオも混ぜたいです。あ、サスケ忘れてた。彼も居ます。時々。
そんなカオスな脳みそです。
これを書くに至ったのは、また日記で書きます。
ナルトの声優さんに会えたぞ記念☆ってことで。
でへへ!
あ、今、カオス&腐海な我が部屋からはコミックス探せないのですが、ナルトの家にあったのって、温室でしたっけ?(←おーーーーい?)
更に、コレ書いたのは7/25,26なのですが、雷影に抗議しに行った後に、家に戻るくらいの時間ないかしら? と思っていたのは甘かったですね。
暁&サスケたちの登場で…。チッ!
*2009/08/03up
夢始め